【ウクライナ】ウクライナの春#2 夜行列車紀行 ワルシャワからキーウへ

ワルシャワ東駅にて。

17:30
入線するホームが大きな案内板に表示された。3と書いてあった。それを確認した人は揃って大きな荷物を持っていたような気がする。機内持ち込みのキャリーバッグ1個の私のようなトラベラーはマイノリティだった。

電車は6両ほど。私の席は1号車なのでホームの端まで歩くことになった。1号車に到達するまでの間、最後のハグをしているカップルや、発車間近でタバコの吸い溜めをしているおじさんがいるのは他の都市でも見るような光景。この日は軍人さんと思われるような人たちはほとんど見なかった。主に女性を中心に、ポーランドなどの隣国へ避難していた人がウクライナに戻るために利用しているようだった。


17:49
電車は定刻でワルシャワ東駅を出発した。私の部屋は定員3人のコンパートメント。デフォルトでは3人掛けの座席になっているが、ベッドメイクをすることで3段ベッドが完成する。下から32.34.36というベッド。私に割り当てられているのは36なので一番上ということになる。


部屋には寝具が一通り揃っており、ベッドメイクは各自で行うスタイル。水も一人1本もらうことができる。(部屋に置いてある)


私と15時間の長旅を同部屋で共にすることになった他の2名は1人はウクライナ人のおばさま。車内ではロシア語を話されており、ウクライナ南部の街へ帰る途中とのこと。もう1人は軍事コンサルのような仕事をしているアメリカ人。カリフォルニア在住で旧ソ連の国とアメリカを行ったり来たりしているらしい。ウクライナに来るのは2年ぶりと言っていた。

車内は大変退屈である。私がいつか乗りたいシベリア鉄道もおそらくこうなんだろうな、という退屈具合。ポーランドの時点で電波は途切れ途切れであり、ウクライナに入るとより一層ひどいものになる。

あまりにも暇な車内の過ごし方は人それぞれ。外の通路に出て外をずっと眺めているおじさんもいれば、同室のアメリカ人はずっとPCゲームをしていた。ウクライナ人のおばさんは早々にカップ麺を平らげたあと慣れた手つきでベッドメイクを行い、昼寝をしていた。


ワルシャワを出て4時間ほど経つとポーランドとウクライナの国境地点に到着。ここでパスポートコントロールを受けることになる。


まず最初にポーランドの係員がやってきてパスポートにその場でハンコを押してくれる。その後1時間くらいして電車はゆるやかに発進、ウクライナ領に入る。しばらく走ると停止し、今度はウクライナ側の係員がパスポートを回収しにくる。30分ほど待つとスタンプが押された状態のパスポートが返ってくる。

旧ソ連の国でありがちな、パスポートの最終ページにスタンプを押すという共通事象。私はパスポートを増補しているのだが、その最終ページ、S-40というページにウクライナのスタンプがこっそりと押されていた。

ポーランド側の国境についてから都合2時間ほど。ようやく電車はキーウに向けて加速していった。(私は電車の中、0:15にこれを書いている)

しかしウクライナに入ってからというものの、なかなか重い腰があがらず嫌々走っているようなノロノロ運転が続く。何かを確認しながら走っているのだろうか。運転手が頻繁に小刻みにブレーキをかけるので車内はそれなりに揺れている。ウクライナ人のおばさんのいびきを止めるほど(眠りを浅くさせるほど)の揺れが断続的に続いたと思ったら、暗闇の中でしばらく停車する。そんなことが何回か続いた。 (私は電車の中、0:38にこれを書いている)

部屋はもう暗い。同室のアメリカ人は共用卓の電灯をつけてPCゲームに興じている。高そうなヘッドホンを装備し、完全に自分の世界に入り込んでいた。ちなみにアメリカ人は3段ベッドの中段。共用卓を占有していたり、外で過ごしたりしていることが多いのは自分のベッドにいづらいからかもしれない。この列車は思った以上に窮屈で、熱気がこもるような環境だった。

2:01
衝撃とともに目が覚める。後ろから衝突されたような衝撃だ。電車は止まっている。ウクライナ人のおばさんはよくイビキをかいて寝てられるなと思う。位置情報を見るとまだ国境から10キロほどしか進んでいない。2時間弱で10キロである。

とにかくこの電車はあらゆる音が大きい。色々なものが軋む音が聞こえるし、私の乗っている1号車は最後尾だからだろうか、揺れという揺れ、衝撃という衝撃が増幅されて伝わってくるように感じる。

隣の部屋には赤ちゃんがいたようだ。乗車してから7時間、全く気が付かなかったがあまりの轟音に泣き出してしまった。いつになったら走り出すのだろうか。また睡眠を試みることにする。

7:15
気がついたら眠ってしまっていたようだ。周りが明るくなっていて、部屋のウクライナ人のおばさんが顔を洗いにでかけたタイミングで起きた。寝ている間に電車は300キロほどキーウに向かって近づいてくれていた。昨日の深夜のなかなか進まない時間帯はなんだったんだろう。すごく不気味な時間だった。

早朝の列車は悉く快調にキーウに向けて歩みを進める。もうまもなくキーウ市内に入るところ。定刻は10:45となっているが、iPhoneの時計を見るとまだ9:40だった、かなりの早着かと思い同室のアメリカ人に話しかけるとアメリカ人のiPhoneの時計は10:40。時差を直すのを忘れていたのだ。そんなこんなでほぼ定刻にキーウに電車は到着。青い空、青い電車。とても良い日になりそうな気がした。

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